2011-07-26 Webマガジン『我逢人』Vol.3 を発行しました。


2011-07-26 読書会「『エンデの遺言』を読む」(6/25〜9/17)は継続中です。各回毎に参加できます。

2011-07-21 ToiToiToi!!!のFacebookページを新設しました。こちらもご覧ください。



「大阪・天神祭」

現場で見える真実

 先日あるシンポジウムで、今話題の『デフレの正体━経済は「人口の波」で動く』(角川oneテーマ21)の著者で、政府の震災復興構想会議の委員でもある藻谷浩介氏とご一緒させて頂いた。藻谷氏は著書の中で、「生産年齢人口(15歳~64歳=現役世代)減少に伴う内需縮小」という日本の構造問題を指摘し、その対処策として、①高齢富裕層から若者への所得移転 ②女性の就労と経営参加を当たり前に ③労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受け入れを、の三点を提言されている。いずれも現役世代の個人所得を増やし、個人消費を増やすということが共通課題だ。実際に若者のワーキング・プアの問題、働きたくても働けない子育てママの問題などは、キャリア支援をしていていつも立ちはだかる問題である。
 藻谷氏は平成合併前の約3200市町村の99.9%と海外59ヶ国を自費で訪問するなど、現場で見える真実を大事にされ、その労を惜しまない方だ。そしてその論調は一貫して、汗をかいて真面目に働く生活者の目線に立っている。この本はキャリアに関わる者にも必読書としてお薦めしたい。
 ちなみに・・藻谷氏と私は同郷で、しかも藻谷氏は高校の二期先輩でもある。このToi Toi Toi !!!の活動のことを少しお話してみたら、「社会に必要なことなのでぜひやり遂げてください」と温かいエールをいただいた。改めて、現場で相談に来られる方と共に汗をかく支援者でありたいという思いを強くしている。(毛利 聡子)

シュタイナーの人間の本質論

 読書会で取り上げている『エンデの遺言』の第二章に、「ルドルフ・シュタイナー - エンデに大きなヒントを与えたもう一つの経済観」という項がある。
 ルドルフ・シュタイナーは1861年生まれのドイツの思想家である。その根本思想は、“人間は三重の構造を持っている”というものだ。以下は、小学館から出されている『シュタイナー 芸術としての教育』(対談 上松祐二 子安美知子)を参考にまとめてみた。
 人間の三重構造、第一は目に見える私たちの「体」(ドイツ語ではLeib、 ライプ)、第二は「魂」(Seele、ゼーレ)、第三は「精神」(Geist、ガイスト)。「精神」はどこまでも客観的な実在で、「魂」は人間の反感や共感をもととする主観的な、感情の要素になっているようなもの。もう一つが誰にもわかりやすい「肉体」。つまり人間は体だけではない、三つの世界に属していて、そういう人間だと自覚して、自分を見るようにして、人間関係をつくり上げるようにしていこう、というのがシュタイナーの唱えるアントロポゾフィー、人智学という生き方につながっている。
 三つ目の「精神」は少し理解するのが難しいかもしれない。例えば、花を見て、純粋に色や匂いを知覚しているのは私の体。「美しいな、可憐だな」といい気持ちになっているのは私の魂。また花がしおれてしまって「悲しいな」と思うのも私の魂。しかし、私がこの花を好きであろうと嫌いであろうとこの花には花の法則があって、その法則を私たち人間は認識することができる、それは好き嫌いに関係のないこと。あるいは私がいる、いないとも関係ないこと。そこのところが客観的な精神の世界ということになる。
 また私たちが見る夜空の星は、目という我々の肉体を通して見ている。そしてその星の美しさに感動する。それは魂の世界。ところが、星の運行の法則は、客観的な法則を持っている。それを認識するのは我々の精神の領域。
これは誰もが持っている三つの領域であって、それをはっきり意識化する必要があるという。
 この三層論でいくと、子供の誕生はこのように捉えられている。子供自身は、精神の世界から魂の世界に、そして肉体の世界に下りてくる。それが子供の誕生。そして、人間の死は、肉体が生物学的に滅び、魂は魂の世界に解消し、私たちの自我は、もとの精神の世界に帰る。そして、地上に生きていた間のすべてのことをそこで吟味して、消化して、一つの発展を遂げる。そうしていつの日か、また魂をまとい、肉体という住処を選んで、再び地上生活に下りてくる、と考えられている。このあたりは、輪廻転生の思想が強く生きている。肉体は、自分の親や祖先からの肉体的な遺伝の法則に則って生まれてくるが、純粋に精神の世界から下りてきた自我にとっては、肉体的な親や祖先が自我の前身ではなく、自分の前回の地上生が、自分の前身と考える。すべての人間に、いままで数えきれないほどのこの地上での生があった、とシュタイナーは言っているのである。

 このホリスティックな考え方は、カウンセリングを学ぶ者には比較的受け容れ易いものなのかもしれない。
 さらにシュタイナーは社会も一つの有機体であって、死滅したものではなく、絶えず変化していると考え、社会有機体の三層構造論を展開している。
第一は、人間のなかの文化の領域、あるいは精神活動の領域。これはそれぞれ個人の自由に委ねられるべき領域であり、経済や国家、政治の領域から規制を受けるべきではないという。
第二は、法的領域、政治的領域。そこに支配するのは平等の原理。法的、政治的領域は、それにのみ関わるべきであって、それ以上に発展して、国家が一つの大きな権力を持つようなことはあり得ないという。
第三は、経済領域。経済領域はあくもでも商品の生産と流通、消費にのみ関わるべきであって、そこには分業の思想に基いた友愛の原理が支配すると言える。
 このように三つの領域がそれぞれ独立した領域としてある。それにもかかわらず、それらが互いに混同されて、ある領域が他の領域を束縛し、あるいはそこに混乱が生ずることによって、様々な社会問題が生まれてくるとシュタイナーは唱えている。
 シュタイナーという一世紀以上前に生きた人の思想がエンデに受け継がれ、そして今、我々の目の前にある様々な問題の解決の糸口を提示してくれている。経済学も社会学も素人の私がこの思想に挑み、さらには『エンデの遺言』に挑むのは、軽装の登山家がエベレストをめざすようなものなのかもしれないが、少しでも歩を進めて地上生を精一杯いきたいと思うのである。(毛利)

 


就職活動と採用活動のマッチング


 キャリア・コンサルタントの人たちは、学校や就職支援機関で、相談者が自己理解・仕事理解を深めて、思いと一致する仕事に就けるよう指導している。相談者自身が自分の適性をしっかりと見つめ、自分を活かせる仕事に就けるよう指導するのだからとても重要なことだと思う。
 しかし、実際の求職活動(就職活動)と求人活動(採用活動)は右図のように逆の手順で進む。具体的には求職者は、できるだけ完全な職務経歴を用意して求人広告などの公募先にこれを提出しようとするのに対して、雇用者は手近かな所から必要な人材を探し、最終手段として公募を行う。図の3-4 ステップの辺りで求職と求人の活動が谷間となって手薄となってしまうのだ。
 キャリア・コンサルタントが指導する面接練習や職務経歴書の作成は途中過程であり、この3-4のステップを越えて相談者を自身の希望する会社に就職・定着させることが最終目的。就職・定着という全過程を見渡した時に、現状のキャリア・コンサルティングの守備範囲はまだ狭い。
 ToiToiToi!!!は、この問題を解決するため就職活動と採用活動を仲介することで図の3-4の谷間を埋め、それぞれの活動を一気通貫させることを考えている。具体的には雇用する側(求人側)のキャリア・コンサルタントとして求人活動をサポートし、求職側のキャリア・コンサルタントと連携することでリアルな「その人」と「その仕事」のマッチングを行う。こうすることで、就職活動時にあまり伝えられない会社の実態(RJP:Realistic Job Preview * )をあらかじめ伝えておいたり、あらかじめ希望者の性格や本音をキャリア・コンサルタントを通じて知ることができる。これらのやり取りは、キャリア・コンサルタント同士で行うので企業と学生が直に接することなく、お互いに相手が見えないで勝負するカードめくりのようなマッチングを回避できる。

 就職活動を支援するキャリア・コンサルタントに対して、雇用する側にもキャリア・コンサルタントを置くと、次のようなメリットがある。

  • 単なる書類上の評価ではなく直接その人を知っているキャリア・コンサルタントと、業務実態を知っているキャリア・コンサルタント同士が交渉できる。
  • 従来の採用エージェントとは異なり、「人と人」を通じての仕事の紹介・採用が実現できる。(学歴、成績評価からの脱却)
  • キャリア・コンサルタントが仲介することで、直接話にくい情報などを間接的に伝えることができる。また、キャリア・コンサルタントが状況を踏まえてうまく伝えたり適性を見てから判断できる。
  • RJPをキャリア・コンサルタントを通じて伝えることで客観的に、本人を傷つけず不安を最小限にすることができる。その結果、本当の適性や適合性を見極める事ができ、就職後の定着率も高まる。
  • 求人側にとって、特性に合った人をキャリア・コンサルタントに見極めてもらった上で紹介してもらえる。
  • 求職側として、キャリア・コンサルタントから、より正確な情報提供を受けた上で判断することができる。
  • 内定者に対して、求職側のキャリア・コンサルタントが内定先のニーズに応じて先行して教育することも可能である。


「こんな仕事をしてくれる学生が欲しいんだけれど、情熱があって、この業界でがんばれそうな人」といった素朴なニーズに応えられる求人(採用)側のエージェントとして、従来のキャリア・キャリアコンサルタントの方とともに雇用の活性化・健全化に努めたいと思う。(横山)

* RJP(Realistic Job Preview)とは、実際に会社に入ってから「こんなはずではなかった」といったことにならないよう、あらかじめ実際の業務内容についての現実をしっかりとつたえることである。これらは書類上のやり取りではあまり伝わらないことが多い。

リチャード・N・ボウルズ『あなたのパラシュートは何色?』p.53
 ※ クリックで拡大できます。


『エンデの遺言』読書会

 『エンデの遺言』の読書会が6月25日からスタートしています。最初は5人でスタートし、第3回まで7,8名の方に参加していただいています。毎回、現在の資本主義や金融システムの問題点を衝くエンデの鋭い視点を取り上げ、自由に話し合っています。金融システムの問題は、格差など経済の世界だけの問題ではなく、環境破壊、コミュニティの崩壊など幅の広い病理を引き起こしているが指摘されています。2001年の刊行当初指摘されている「将来の子孫に負債を先延ばしすること」が、経済破綻や東北大震災、原発問題という現実的な課題として今まさに突き付けられているこの時に、『エンデの遺言』に取り組むのは「天の時」なのでしょう。
 童話作家エンデが本領を発揮しているのは、経済活動から内的活動まで人間の活動をフラットに繋いで見せてくれたことだと思います。
 フランス国旗の3色(トリコロール)は、青:自由、白:平等、赤:博愛(友愛)を象徴しているとされていますが、エンデはさらに、シュタイナーの社会の三層構造を踏まえて、経済は友愛と繋がっていると言います。自由=精神、芸術・平等=法、友愛=経済活動と言うのは大きな人間の活動の一部であり、経済的破綻、社会構造の変化、自然との向き合い方など、多くの問題が噴出している中、未経験の問題へ取り組むためには、これらを未来から考えることを提案しているのがエンデであり、ファンタジーを使ってそれをやろうとしました。

 余談ですが、冒頭の毛利さんの「シュタイナーの人間の本質論」で触れられている3層構造(体・心・精神)はケン・ウィルバーの3ボディ(グロス・サトル・コーザル)と通じるものがあります。また、トリコロールの考え方もまたウィルバーの美・真・善と通じています。ToiToiToi!!!の活動は、ウィルバーのインテグラル理論をバックにもっているので、3層構造のホロンの広がりとAQALの視点を大切にしています。ちなみに、ToiToiToi!!!のFacebookページの円の図はこの概念をシンボル化したものです。

読書会は、
1章ずつ読み進んでいます。各回毎の参加が可能ですので、関心のある方はお気軽にご参加ください。(横山)

ご案内はこちら


「とくやまの まるみみぞうさん」


  • ぞうさん
  • ぞうさん
  • おはなが ながいのね
  •   そうよ
  •   かあさんも ながいのよ


 こどもの頃から何回となく歌ってきたこの歌の本当の意味がわかるようになってきたのは大人になってからのことです。
 作者はまど みちおさん。1909年生まれ、2009年に100歳を超えられました。“ポケットをたたくと ビスケットはふたつ 〜 ” の「ふしぎなポケット」や、“しろやぎさんから おてがみ ついた くろやぎさんたら よまずにたべた 〜 ” の「やぎさん ゆうびん」などを書かれた詩人です。
 まどさんは、瀬戸内海をのぞむ小さな町で生まれ、祖父と暮らした6歳から9歳のころの記憶が作品のすべてに影響しているとおっしゃっています。山口県徳山市(現周南市)。そこは穏やかな海があり、優しい山があり、夕焼けがとてもきれいな町、私のふるさとでもあります。幼い頃から身近に多くの生き物や花や木がありました。一つ一つが美しいキラキラ光るしずくの様な詩を紡ぎ出されるまどさんと、同じ景色を見、風に吹かれ、匂いをかぎ、同じ空気に包まれて育ったことを誇りに思います。

 先日帰省した際、まどさんの生家近くにある動物園に行ってみました。こどもの頃よく遠足にきていた思い出の動物園は当時のままで、大好きだったぞうもあの頃と同じ場所で迎えてくれました。
ぞう舎の前には近年建てられた歌碑がありました。

  • とくやまの
  • まるみみ ぞうさん
  • まあるい おみみで
  • まあるい ちきゅうのうた
  • きいてるよ
  • まあるい おひさまのうた
  • きいてるよ
  • - まあるい まあるい
  •  うちゅうの こころで


 「ぞうさん」の歌は、ずっとなかよしのおかあさんぞうと子ぞうの歌だと思ってきました。でもこんな風にも読めます。誰かが長いお鼻をからかいました。すると子ぞうは「わたしのいちばん大好きなお母さんもお鼻が長いのよ」と誇りをもって答えます。ぞうはからだが大きくて、お鼻が長いからぞうであって、まどさんは、「ぞうはぞうとして生かされていることがすばらしい」とおっしゃっているようです。

 まどさんは、ご著書の『どんな小さなものでも みつめていると 宇宙につながっている 詩人まど・みちお 100歳の言葉』で、

  • 小さいほど大きくて、
  • 大きいほどちっぽけである。
  • 小さいものほど
  • 大きな理由がある。
  • この世のものは
  • そこにいるだけ、あるだけで
  • 尊いものなんです。
  • この世は、人間だけのものじゃない。
  • 人間は、たくさんのものの一つにしかすぎないんであって、
  • 人間だけが幸せなんてありえない。
  • もっと謙虚でいていいんじゃないでしょうか。


とおっしゃっています。
 「人も 自然も 物も みんな同じ」と、すべてに等しくやさしいまなざしを注がれるまどさん、そして「やぎさん ゆうびん」や「ふしぎなポケット」などユーモラスな面もお持ちのまどさん、その数多くの童謡や詩、絵画は奥が深く、これから時間をかけてじっくりとその宇宙観に浸ってみたいと思います。(毛利)


【ことば】

「怒りは自分に盛る毒。」(ホピ族の格言) 

 インディアンの格言を集めた『アメリカ・インディアンの書物より賢い言葉(エリコ・ロウ)』(扶桑社)には短い言葉で核心をつく格言が一杯詰まっている。この言葉は、印象に残っている格言の一つ。たった一行でも、ふっと気づける言葉を味わってみた。日頃不満や怒りを感じる事が多い、それだけ自分自身を冒しているのかもしれない。(横山)



 7月18日、早朝にもかかわらずナデシコJAPANの試合をたくさんの人が応援していました。そして日本は強豪アメリカから見事優勝を勝ち取りました。試練のただ中にある日本、本当に苦しい時を耐え抜く元気を与えてくれたのは欺瞞に満ちた政治ではなく、スポーツのパワーでした。なでしこJAPANありがとう。


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